ナイジェリアの貧困地域から世界へ(9)

お揃いのゲームシャツにプラクティスシャツ、新品のヤスダスパイクにレガースやカバンを持って颯爽とサッカーグランドに現れるナイジェリア選抜は、一見するとナイジェリア全土からセレクションに合格して集められたサッカーエリートに見間違われそうだか実はそうではない。広さで言えば足立区程度の範囲から集められた選手たちで構成されている。ナイジェリア選抜は2週間程度ラゴスで全体練習をした急造チームだ。クラブチームに属していない選手もいる。いつもは空き地やストリートで近所のおじさんやお兄さんたちに稽古をつけてもらうのだ。失礼のないようにわかりやすく言えば、野良サッカーをしていたような選手たちもいるのだ。

ナイジェリアに生まれたらほぼノーチャンスの人生を送るナイジェリア人が大多数だ。生まれ育った地域から簡単には出られないのだ。多くのナイジェリア人はそれを理解した上で明るく生きている。ナイジェリア選抜はそんなナイジェリアに生きる若い12歳以下の選手たちだ。若き勇敢なナイジェリア選抜は加藤社長とアバヨミ氏、それに多くの協力者のサポートを得て、「U12ジュニアサッカー ワールドチャレンジ2019」の決勝の試合が始まる笛をピッチの上で聞けるのだ。感慨深い。

連戦の疲れと時差ボケで明らかにキレのない10番サンデーと7番リトルメッシだか、やはり体の使い方ボールの持ち方、間合いの取り方と全てにおいて広州富力足球倶楽部の選手たちを凌駕する。しかし広州富力足球倶楽部も流石だ。決勝に進んできただけはのことある。簡単にはやられないのだ。一進一退の攻防が続く中、若き勇敢なナイジェリア選抜が若干ゲームを支配していた。若き勇敢なナイジェリア選抜は、2センターバックが機能しており、得点王になった広州富力足球倶楽部の20番のストライカー楊選手に仕事をさせないのだ。まだ両サイドバックは頻繁に上がらない。アンカーには今大会で桁違いの活躍を見せる10番サンデーがいる。よって広州富力足球倶楽部はペナルティーエリアに侵入する術が見つからないのだ。若き勇敢なナイジェリア選抜は攻撃だけではなく、守備に関しても今大会では飛び抜けていたのだ。前半25分が終了した。若き勇敢なナイジェリア選抜はいつもように自陣の真ん中あたりで円陣を組んで何か確認しあい、その後また発声をする。それが彼らのルーチンだ。

ナイジェリア人は大きな声で元気よく話をするのが大好きだ。人が話をしていてもお構いなく自分の話をしてくる。そんな光景をナイジェリアの街中でよく見かける。今はハーフタイムだというのにコーチ3人が同時に大きな声で選手に指示をだす。若き勇敢なナイジェリア選抜は慣れたもので、コーチたちの指示を取捨選択をして的確に必要なものだけ聞き分ける。いよいよ後半が始まる。前半はアンカーの位置にいた10番サンデーが、後半は少し前目のポジションになった。ムリコーチからの指示だ。若き勇敢なナイジェリア選抜は点を取りに行く布陣になったのだ。

ハーフタイムのナイジェリア選抜。




後半に備えるナイジェリア選抜。




後半に備えて指示を聞くナイジェリア選抜。




つづく