ナイジェリアの貧困地域から世界へ(8)

一時は諦めかけた来日。一時は諦めかけた大会出場。想像を絶する幾多の困難を乗り越えて、若き勇敢なナイジェリア選抜は決勝の舞台に立っている。来日前、彼らが決勝の舞台に立てるとは誰も想像しなかった。その想像しなかった光景が目の前に現実としてあるのだ。ただ一人、加藤社長だけは、首尾一貫して決勝でバルサを倒して世界一になると言い続けていたのだ。彼だけは信じていたのだ。しかし、残念ながらバルサは決勝リーグでタイトヨタに負けてしまい、決勝に進むことはできなかった。若き勇敢なナイジェリア選抜が決勝の舞台で戦う相手は、トップチームにストイコビッチを擁する広州富力足球倶楽部だ。多くの日本人スタッフがいる広州富力足球倶楽部はインテリジェンスの高いチームだ。事実彼らが決勝の舞台に立っていることがそれを物語る。

お馴染みのFIFAのアンセムが流れ始めると、若き勇敢なナイジェリア選抜と、広州富力足球倶楽部の選手たちは審判団の後に続いてピッチへと進み始めた。若き勇敢なナイジェリア選抜の表情は引き締まり、中には笑顔を見せながら歩みを進める選手もいる。加藤社長と岸田カメラマンと自分は選手たちをハイタッチでピッチに送り出した。送り出す際に表情を見るといつもと変わらないナイジェリア選抜だった。安心した。しかしおそらく彼らも緊張はしていたのだろう。でも、どこか楽しそうだった。

無念にも来日の10日ほど前に交通事故で亡くなってしまったアデオラ選手の顔写真と名前が入ったレガースを脛にテーピングで巻きつけ、若き勇敢なナイジェリア選抜は広州富力足球倶楽部の選手たちとピッチ中央に横並びになり、観客に向かって一礼をした。その後、相手チームの選手と握手をした若き勇敢なナイジェリア選抜は、自陣でエンジンを組んでヨルバ語で士気を高める発声をした。彼らの声はスダシアムにけたたましく響いた。アデオラ選手の想いも彼らの発声に乗っていたはずだ。そしてアデオラ選手の為にもアデオラ選手のお父さんの元に金メダルと優勝トロフィーを持って帰ると誓ったのだ。

9月1日 14時50分、決勝のキックオフだ。アディショナルタイムは設定されておらず、25分ハーフで試合は始まった。



ピッチに歩みを進める若き勇敢なナイジェリア選抜。




いよいよ決勝の笛。







つづく