ナイジェリアの貧困地域から世界へ(3)

加藤社長はいつも明るい。怒ったりイライラすることなどあるのだろうか、と、いつもこちらが考えさせられる。それほどあっけらかんとしているのだ。そんな加藤社長でさえ、今回ばかりは心が折れかけたそうだ。というのもU12のナイジェリア選抜が来日するにあたって、パスポートの発給、ビザの発給、航空券の購入等々、全てがギリギリのタイミングで行われていたからだ。表向きには明るい勇敢なナイジェリア選抜が颯爽と来日して旋風を巻き起こしているかのように見えるが、その裏では数人のスタッフが夜通しFacebookのメッセンジャーで、関係各所と調整や交渉を行い、一時はご破算になりかけた来日をなんとかかんとか実現させたのだ。自身もメッセンジャーで四六時中やり取りを見守っていたが、今までどんな困難にも打ち勝って来た加藤社長でも今回ばかりはもう無理かもしれない、と感じたほどだ。

パスポートやビザ問題はこちらのブログ から。

そんな若き勇敢なナイジェリア選抜は、ナイジェリアの情勢や来日に際しての諸問題を奇跡的にクリアすることに成功して、蜘蛛の糸一本を辿って日本にやって来たのだ。羽田空港に降り立っただけで関係者の安堵感は想像を絶するものだった。

しかし、諸問題はここからも頻繁に起きる。夜遅くに羽田空港に到着したナイジェリア選抜は、宿泊や合宿予定地の木更津までの移動手段がすでに絶たれていたのだ。関係者がメッセンジャー上でどうするかを検討する最中、この問題を解決したのはなんとナイジェリアに幾度となく訪問し、加藤社長やアバヨミ氏を3年にも渡って撮影し続けているドキュメンタリー映像監督の岸田氏だった。彼はナイジェリア人たちの気持ちや文化風習を理解できる希少な人材だ。その彼がナイジェリア選抜を尊重しながらうまくコントロールして、木更津まで連れて行ったのだ。ナイジェリアでの撮影中、岸田氏は自分の立ち位置と役割を心得ている。しかし、必要な時は当たり前のように手を差し伸べて助けてくれるのだ。その彼も今回のナイジェリア選抜の来日の動向を常にカメラに収めながら帯同する重要なキーマンだ。

いつものスタイルで撮影する岸田氏は(右)




つづく