ナイジェリアの貧困地域から世界へ(12/最終話)

若き勇敢な世界チャンピオンのナイジェリア選抜のメンバーは、疲れているはずなのに想像を絶するほど元気だ。短期間で7試合を戦い抜いた後でも元気だ。笑顔が弾けている。幼いながらも本当に尊敬できる、とても立派なナイジェリアのフットボールプレイヤー達だ。

ピッチ上では表彰式の準備が進められている。彼らはこれから世界チャンピオンとして表彰式に出席するのだ。

アバヨミ氏と加藤社長は嬉しさを滲ませながらも、どこか安堵の表情を浮かべていた。アバヨミ氏は一瞬だけ泣いていた。ナイジェリア人のアバヨミ氏は陽気で心が強いキャラクターだ。加藤社長は寛容さと勇気と知性で前に進むキャラクターだ。その2人が固い握手と抱擁を交わした。

アバヨミ氏と加藤社長が握手と抱擁を交わし終えると、岸田カメラマンが加藤社長にインビューを始めた。プロのカメラマンの所作だ。ところがカメラを回してインタビューを始めた岸田カメラマンは泣いていた。3年もの間、ナイジェリアに何度も渡り、アバヨミ氏と加藤社長のプロジェクトを撮影し続けた岸田カメラマンは、2人の苦労や紆余曲折の道のりを誰よりも理解しているのだ。それに自身のナイジェリアのプロジェクトのフィルミングに、いつ終わりが来るのかもわからない中での撮影に、今日やっと一筋の光が射したのだ。それら全ての感情が涙となって岸田カメラマンの頬を伝ったのだ。

涙を流しながらそれでもプロのカメラマンとして撮影とインタビューを続ける岸田カメラマンの正面にいる加藤社長も泣いていた。パスポートやビザや航空券の問題が大会直前まで解決せずに、本大会に出られるかどうかわからない中、ずっと各方面への調整を行なっていたのだ。またこのプロジェクトを支えてくれた従業員や多くの協力者に、優勝という結果で恩返しをした安堵感もだ。それにアバヨミ氏との長きに渡るナイジェリアでのプロジェクトへの想い。そして忘れてならないアデオラ。今回の大会の一週間前に交通事故でこの世を去ったアデオラに、金メダルとトロフィーを持って帰ることをこのプロジェクトに携わる全員が誓ったのだ。それが実現したのだ。それら全ての感情が涙となって岸田カメラマンと加藤社長の頬を涙が伝ったのだ。

幾多の困難を乗り越えて、大阪の地で若き勇敢なナイジェリア選抜は世界チャンピオンになったのだ。と、同時に若き勇敢な世界チャンピオンのナイジェリア選抜は自らの手で夢の扉を開いたのだ。

アバヨミ氏と加藤社長は言う。若き勇敢な世界チャンピオンのナイジェリア選抜のメンバー、それにナイジェリアにいるサッカーをしている子供たちや、これからサッカーを始める子供たちのサポートを一生続けていくのだと。



観客席に向かう若き勇敢な世界チャンピオンのナイジェリア選抜。




加藤社長と目頭をおさえるアバヨミ氏。




泣きながらインビューをする岸田カメラマンと、泣きながら答える加藤社長。




表彰式での若き勇敢な世界チャンピオンのナイジェリア選抜。




アデオラの顔写真がプリントされたレガースを持つ選手たち。




おわり