ゲットーで生き抜くナイジェリアの子供たちが来日

一生のうちたった一度のチャンスにも巡り会うことのないナイジェリアの子供たちが来日した。しかもラゴスの近くのゲットーから。奇跡だ。ちなみにナイジェリアのゲットーで生きるというとことは、生き抜くことと同義だ。毎日を生き抜く。毎晩眠りにつくとき、今日も生き抜いたという事実を噛み締めながら眠る感覚。疲れを癒したり安堵の眠りにつく時の感覚とはすこし違う。ゲットーの住人たちはそんな過酷な環境で毎日を生き抜いている。

そんな過酷な環境で生き抜く逞しい、しかしとびきり笑顔の素敵なナイジェリアのゲットーの子供たちが来日を実現させた。一生に一度あるかないかのチャンスが彼らに巡ってきたのだ。彼らが来日を果たせたのは株式会社フォワードの加藤社長と、ナイジェリアのプロサッカーチームのイガンムFCのオーナーであるアバヨミ氏と、日本とナイジェリアの多くの支援者の尽力があったからこそ。ナイジェリアの情勢を知っている者から言わせれば、全くもってありえない奇跡が起きているのだ。ナイジェリアではパスポートの発給だってままならない。そもそも国外に出られることが稀だから。子供たちのパスポートを取得しようとすれば、併せてその子供たちの親御さんの分までパスポートの取得が必要になる。それなのに外務省には発券するパスポートのストックが無いのだ。パスポートの在庫切れ。そんなことは聞いたことがない。しかも、ナイジェリアの子供たちを来日させようとすれば、こちらが誘拐組織だと疑われる始末だ。だからこそ前述の、親御さんたちのパスポートも必要なのだとか。

そんな奇跡的な来日は序章であり、ここから彼らナイジェリアの子供たちの挑戦が始まる。週末から大阪で開催される「U12ジュニアサッカー ワールドチャレンジ2019」に出場するのだ。ナイジェリアでの練習環境も劣悪でスパイクや脛当て、それにちゃんとしたユニフォームも持っていない彼らが、家族や兄弟、それにゲットーの人たちの思いまでも背負って、日本やドイツやスペインのU12のチームと戦うのだ。

ゲットーから出たことない彼らが実現させた夢の1ページは、来日を決めたと同時に始まっている。そしてまたここから彼らは新しいチャンスを掴み、ナイジェリアからヨーロッパ5大リーグに向かう。しかも早ければあと4.5年以内だろう。そんな彼らの人生を応援したいし見てみたい。ただ、ひとつ残念でならないのは、ナイジェリア選抜として今回メンバー入りをしていたアデオラが、来日直前に交通事故で亡くなってしまったことだ。ナイジェリア選抜の子供たちもアデオラが亡くなってしまって悲しいはずだ。だからこそ、今回の来日でこころおきなく思い切りプレーして欲しい。ゲットーに戻った時に絶対に後悔して欲しくない。

初戦は8月29日 9時45分 OFA万博フットボールセンター Aコートで湘南ベルマーレアカデミー選抜と。歴史の始まりだ。








つづく。