ナイジェリアの貧困地域から世界へ(6)

予選Bグループのナイジェリア選抜の初戦は湘南ベルマーレアカデミー選抜だ。実を言うと、若い頃アバヨミ氏はベルマーレの職員だったこともある。これは何かの縁としか言いようがない。そんなベルマーレ相手にナイジェリア選抜は2-0と快勝して幸先の良いスタートを切った。予選2戦目の対戦相手はサガン鳥栖U-12だ。今夏までトップチームにあのフェルナンド・トーレスが在籍していたチームの下部組織になる。相手にとっては申し分ない。ナイジェリア選抜は鳥栖相手にしぶとく引き分け、3戦目の結果次第で予選通過を決めることとなった。

この頃からナイジェリア選抜の連絡用のFacebookメッセンジャーでは、少しずつ彼らに期待する声が大きくなってきた。しかし依然としてグループリーグを通過出来たらいいな、という程度のものだったと記憶している。ただ、加藤社長だけは決勝でバルサを倒して世界チャンピオンになる。と、首尾一貫した考えであったことを記しておきたい。

3戦目の相手は新座片山フットボールクラブ少年団だ。この試合は1-0でナイジェリア選抜がものにして、結果、グループ首位で決勝トーナメント進出を決めたのだ。メッセンジャー内はお祭り騒ぎとなっていた。

決勝トーナメントの初戦は西宮サッカースクールだ。この試合は本当に10番と7番の動きもキレていて、ナイジェリア選抜の思うような試合運びも出来た。1-3で勝利を収め、決勝トーナメント2戦目にはバイエルン・ミュンヘンを迎えることになった。バイエルンの選手たちの醸し出す雰囲気は、トップチームそのもので、多くのファンや観客に写真をせがまれるほどの人気ぶりだ。そんなバイエルンとの試合は一進一退の攻防が続いた。試合結果がどちらに転んでもおかしくない内容だったが、最後にはナイジェリア選抜が押し切って1-0でベスト4に進出することになった。決勝トーナメントのハイライトの1つといっても過言ではない試合だ。ベンチのコーチングスタッフの声も枯れていた。

最終日はパナソニックスタジアムに舞台を移して、プロさながらの待遇で試合を行うのだ。控え室のロッカールームに選手のユニフォームをハンガーにかけて念入りに準備を行う。準備といってもそこはナイジェリア選抜。早速踊りと歌のオンパレードだ。いつも明るく陽気なナイジェリア選抜はあまり緊張している様子が見られない。鉄のメンタルの持ち主たちたのかとこちらが勘ぐってしまうほどだ。実は後日、陽気なナイジェリア選抜の選手たちが、インタビューアーに対して「試合前は緊張していた」と答えているのを聞いて、やはり緊張していたのだなと妙に納得した。

ガンバ大阪の本拠地であるパナソニックスタジアムで、決勝戦進出をかけて準決勝が始まる。相手は前評判の高いJFAトレセン大阪U-12だ。ナイジェリア選抜に帯同しているウイニングイレブンの日本代表プロプレイヤーで、かつ、パナソニックスタジアム周辺が地元のかつぴーや選手曰く、「JFAトレセン大阪U-12はホンマに強いっす。強さは昔から半端じゃないっす。プロ選手も何人も輩出してますし」と、今回ばかりはナイジェリア選抜も苦戦をするとの予想をしていた。

鳥栖との対戦。




バイエルンミュンヘンとの大一番。




準決勝からはパナソニックスタジアムで。




ロッカールームでリラックスした様子のナイジェリア選抜。




つづく