ナイジェリアに手ぶらで行った話4

オショディーでのトライアウトが終わり、トシンの結婚披露宴に向かうことに。トシンの実兄のバヨは実弟の結婚式に出席せずにトライアウト会場で忙しそうに指示を出したり電話をしたりしている。実弟の結婚式と同じくらいナイジェリアの若い選手たちへの未来への道筋を作ることが彼には大切なのだ。彼にはというよりこの国には必要なのだ。バヨや加藤さんが行うこの地道な活動がナイジェリアの明るい未来を切り拓くのだ。ナイジェリアの若い人たちに夢と希望と勇気を与えるのだ。

バヨの実弟であるトシンの結婚披露宴に出席するために一度ホテルに行ってチェックインするこに。ショップライツで200円ほどの下着を買う時間は無さそうだ。ノーチャンスだ。フレッシュな下着に着替える事はこの時点で諦めた。諦めたくないけど諦めた。いや諦めたくないけど現実的に無理だ。

ホテルに向かう道中で加藤さんに相談してみた。「加藤さん、パンツください」と。加藤さんもカバン一つでカンボジアからナイジェリアに来てる強者だ。なかなかの強者だ。そんな加藤さんが「いいよ」と言ってくれた。人生初の他人のパンツを履くという行為をすることになった。しかもナイジェリアのラゴスで。ちなみにパンツと下着と靴下も貰うことになった。加藤さんが神々しく見えた。

ある程度歳を歳を重ね、そこそこの生活ができるようになった自分が、モスクワで荷物が無くなり、手ぶらで暑いナイジェリアにやって来て、そのピンチを、カバン一つでお手軽にカンボジアからやって来た加藤さんからパンツをもらって救ってもらい、ささやかな幸せを感じることができた。ナイジェリアに来て初心忘るべからずだ。加藤さん、ありがとうございます。そして、バヨは上下の民族衣装を貸してくれたし、新品の民族衣装をプレゼントしてくれた。これでしばらくはナイジェリアで安泰だ。他人のパンツだけどフレッシュなパンツは、自分の心を落ち着かせる。

つづく